なぜ生存配偶者は死後離婚を選ぶのか。理由は多岐にわたるが、法テラスや自治体の無料法律相談、司法書士事務所への相談傾向から浮かび上がるのは、次の3つの類型だ。
第一に、義父母の扶養・介護義務からの解放。民法877条1項は直系血族および兄弟姉妹に扶養義務を定めているが、これは姻族には原則として及ばない。しかし、かつて同居していた、あるいは義父母から扶養を受けていたといった特別な事情がある場合、裁判所の判断で扶養義務が認められるケースがある。死後離婚をしておけば、こうしたリスクを遮断できる。
第二に、葬儀・お墓・法要をめぐる精神的負担の回避。配偶者の死後、義理の親族から葬儀の喪主やお墓の管理、法要の取り仕切りを期待されることがある。特に夫を亡くした妻が、夫の実家との間で祭祀継承をめぐり深刻な対立に発展する例は少なくない。死後離婚は姻族関係を断つため、こうした慣習上の期待や圧力から距離を置く法的根拠となる。
第三に、DV・モラハラ・虐待の末の死別。配偶者本人からの暴力や精神的虐待に耐えてきた生存配偶者が、死後も配偶者の親族からの干渉・支配が続くことを避けるために死後離婚を選ぶケースが、2026年以降の相談事例で目立っている。これは単なる「縁切り」ではなく、生存配偶者の人生を再構築するための緊急避難的な手続きだ。