『シテール島への船出』は、画家アントワーヌ・ヴァトーが1717年に王立絵画彫刻アカデミーの正会員資格を得るための提出作品(受入作品)として制作した油彩画です。当時のアカデミーには厳格なヒエラルキーが存在し、歴史画が最高位とされ、肖像画や風俗画、風景画は下位に位置付けられていました。
しかし、ヴァトーが提出した本作は、神話画の体裁を取りながらも貴族たちの優雅な恋愛遊戯を幻想的な自然の中に配した、これまでにない独創的な世界観を持っていました。既存のカテゴリーに当てはめることができなかったアカデミー側は、彼のために「雅宴画(フェート・ギャラント)」という特別枠の新ジャンルを創設し、正会員として承認した経緯があります。
現在、ルーヴル美術館の至宝として飾られている本作は、重苦しいバロック様式から軽快で繊細なロココ美術への劇的な転換を告げた歴史的名画として、世界中から訪れる鑑賞者を魅了し続けています。