1804年、ナポレオン・ボナパルトがフランス皇帝として戴冠した際、彼は王朝の伝統的なシンボルであったブルボン家のユリ(Fleur-de-lis)を排除した。代わりに彼が選んだのが、純金で鋳造された「アベイユ(ミツバチ)」の紋章だった。
なぜミツバチだったのか。理由は歴史の深層にある。5世紀にフランスの礎を築いたメロヴィング朝の国王キルデリク1世の墓から、300個以上の金のミツバチの装飾品が発掘された事実に基づいている。ナポレオンは自らを最古の王家と結びつけることで、自らの支配の正当性を証明しようとした。
ミツバチは秩序ある社会構造、無私無欲の勤勉さ、そして冬を乗り越えて春に蘇る不滅の生命力を表す。皇帝の外套、絨毯、建築物に刻まれたアベイユの姿は、単なる装飾を超えた政治的・思想的ステートメントだったのだ。