栄養価の高いナチュラルチーズですが、妊娠中の女性や免疫力が低下している高齢者が摂取する際には、絶対に無視できない重大なリスクが存在します。それがリステリア・モノサイトゲネス(リステリア菌)による食中毒です。
リステリア菌は土壌や河川など自然界に広く生息する細菌で、一般的な食中毒菌とは異なり、4℃以下の冷蔵庫内や高塩分環境でも増殖できる恐ろしい特性を持っています。厚生労働省や国立感染症研究所の発表によると、健康な成人が感染しても軽微な発熱や胃腸炎で済むケースが多いものの、妊婦は一般人の約20倍感染しやすく、胎盤を通じて胎児に移行すると流産・死産・新生児の重篤な感染症(敗血症や髄膜炎)を引き起こす危険が指摘されています。
リスクを避けるための判断基準は明確です。鍵を握るのは「原産国と殺菌工程」および「調理時の加熱」です。
日本の食品衛生法では乳等省令により、国内で製造・流通する乳製品には生乳の厳格な加熱殺菌(63℃で30分間、または75℃以上で15秒間など)が義務付けられています。そのため、雪印メグミルク、明治、森永乳業、よつ葉乳業などの大手国内メーカーが製造する国産ナチュラルチーズは、生食してもリステリアのリスクは極めて低いとされています。
一方、フランスやイタリアなど欧州から直輸入される伝統的なナチュラルチーズの一部(特に「au lait cru / 無殺菌乳使用」と記載されたカマンベール、ブリー、青カビ、ウォッシュタイプ)は、非加熱の生乳で作られているため、生食での摂取は厳禁です。
ただし、リステリア菌は熱に弱いため、中心温度が75℃以上で1分間以上加熱されれば完全に死滅します。ピザ、グラタン、トースト、チーズフォンデュのように、グツグツと沸騰するレベルで十分に加熱調理された状態であれば、輸入チーズであっても妊娠中に安全に楽しむことが可能です。