恋愛面における面堂終太郎の立ち位置は、きわめて数奇な変遷をたどりました。登場初期は、ラムに一目惚れしつつ、あたるに愛想を尽かしかけていた三宅しのぶと急接近。「美男美女の理想のカップル」として収まるかに見えました。しかし、ラムがあたるへの一途な愛を貫き続けるなかで、面堂としのぶの関係性もしだいにズレ始めます。
決定的な転機となったのが、原作屈指の名エピソードとして名高い『扉を開けて』です。時間旅行を管理する運命製造業界のウサギ男・因幡(いなば)が登場するこのエピソードにおいて、しのぶの未来の伴侶として示されたのは、面堂ではなく純朴で心優しい青年・因幡でした。しのぶは、怪力という自身のコンプレックスを受け入れ、守るべき対象として因幡を選び取ります。
では、面堂の恋の結末はどうなったのでしょうか。物語のクライマックスである最終章『ボーイ・ミーツ・ガール』に至っても、面堂は特定の女性と結ばれることはありませんでした。ラムへの未練を抱きつつ、取り巻きの女子生徒たちに黄色い声を浴びせられ、妹・了子の仕掛ける悪夢のような嫌がらせに奔走する日々——それこそが、彼に与えられた永遠の日常でした。誰か一人と結ばれて家庭に落ち着くのではなく、「美男子でありながら永遠に満たされない喜劇の道化」であり続けることこそが、作者・高橋留美子が面堂終太郎というキャラクターに与えた最高の特権だったと言えます。