物語の舞台は、神奈川県立鷺沢高校(通称・南高)。主人公の神谷新二(かみや しんじ)は、ジュニアユース時代までサッカーに打ち込んでいたものの、天才サッカー選手として名を馳せる兄・健一との圧倒的な才能差に打ちのめされ、高校進学を機にスパイクを脱ぐ決断を下します。走ることへの情熱をくすぶらせていた新二の前に現れたのが、中学時代に陸上短距離で全国トップレベルの実力を誇りながら、ある事情から走ることをやめていた幼馴染の一ノ瀬連(いちのせ れん)でした。
連の奔放かつ天性のスピードに魅せられた新二は、彼を誘って南高陸上部へ入部。そこには、温厚ながら部を力強く牽引する主将の高梨、ストイックに跳躍種目へ打ち込む根岸、中学時代からの仲間であるマネージャーの谷口若菜(たにぐち わかな)、そして新二たちの潜在能力を見抜く指導者・三輪先生らが集っていました。物語は第1部「イチニツイテ」、第2部「ヨウイ」、第3部「ドン」の3部作構成で、高校3年間の激闘と成長を丹念に描き出します。
本作の大きな推進力となっているのが、新二と連の対比的なキャラクター造形です。努力と反復練習で地道にタイムを削り出す秀才型の新二と、圧倒的な才能を持ちながらも精神的な脆さを抱える連。二人が時に衝突し、互いの存在を唯一無二のライバル兼相棒として認め合っていくプロセスは、青春バディものの最高峰と称されるにふさわしい熱量を放っています。