エーラスダンロス症候群は、細胞と細胞の間を埋めて組織の強度や弾力性を保つ「結合組織」に先天的欠陥が生じる疾患群です。人間の体を建造物に例えるなら、骨や内臓をつなぎ止めるセメントや鉄筋にあたるコラーゲン線維の形成異常や、それに関わる酵素の遺伝子変異によって引き起こされます。
この病気の根本にあるのは、体内のコラーゲンが正常に生成・成熟できないという生物学的要因です。コラーゲンは全身の皮膚、関節、靭帯、血管壁、内臓壁などに広く分布しているため、異常が生じると特定の部位にとどまらず、全身にわたって極めて多彩な症状が現れます。主な初期症状および基本徴候としては、以下の3大特徴が挙げられます。
第一に皮膚の過伸展性です。肘や首、手首などの皮膚を引っ張ると、痛みを感じることなく数センチメートルも容易に伸び、手を離すと元に戻る現象が見られます。また、皮膚自体がビロードのように滑らかで傷つきやすく、わずかな打撲で皮下出血(青あざ)を作ったり、切り傷の治りが極端に遅く「タバコ紙様瘢痕(薄くシワのある傷跡)」が残ったりします。
第二に関節の過可動性です。肘や膝が通常とは逆方向に反り返る(過伸展)、親指が前腕の内側にペタリとつくなど、驚異的な柔軟性を示します。しかし、これは靭帯が関節を固定する力を失っていることを意味し、幼少期から習慣性の肩関節脱臼、膝蓋骨脱臼、足首の捻挫を繰り返す原因となります。
第三に遺伝形式と発症メカニズムです。本症の多くは常染色体顕性(優性)遺伝または常染色体潜性(劣性)遺伝の形式をとります。顕性遺伝型の場合、親から子へ50%の確率で遺伝子変異が受け継がれますが、家系内に過去の発症者がいない「孤発例(突然変異)」も約半数近く存在します。「家族に同じ症状がいないから違う」と自己判断することは極めて危険です。