白い物質が単なる液体にとどまらず、粉を吹いたような質感や粘液状のカビへと変貌していく場合、恐るべき白僵病(Beauveria bassiana)の影がちらつく。これは土壌中に普遍的に存在する糸状菌(カビの一種)が昆虫の体表から侵入し、筋肉や内臓組織を貪り尽くす致死率極めて高い感染症だ。発病初期には体節から白濁した粘液が滲み、数日後には全身が硬化して白い胞子に覆い尽くされるという凄惨な結末を辿る。
巨大化を続ける現代のペット産業において、昆虫マットや止まり木の衛生管理は極めてセンシティブな課題だ。老舗の昆虫専門店として名高いむし社などのプロフェッショナルが常に警鐘を鳴らすように、安価な未発酵マットや野外から持ち込んだ無殺菌の倒木には、白僵病菌を含む無数の病原体が潜んでいる。応用昆虫学のフィールドでは、この菌は害虫駆除の生物農薬として研究されるほど強力な殺傷力を持つ。愛虫を守るためには、加熱殺菌処理済みの資材を選び、高温多湿の淀んだ空気環境を徹底的に排除することが必須となる。