美術やオークションに詳しくない層の間では、「シルクスクリーンならポスターのように無限に印刷できるのに、なぜ何百億円もの価値がつくのか?」という疑問や誤解がしばしば見受けられます。しかし、ここにはファインアート市場における決定的な事実が存在します。
誤解1:「アシスタントが刷った複製画だから誰でも作れる?」
ウォーホルのスタジオ「ファクトリー」では助手が制作に関わっていたのは事実ですが、1962年から1964年にかけて制作された初期のキャンバス作品群は、ウォーホル自身が綿密にインクの粘度や版の位置を微調整しながら刷り上げた「一点物の絵画」です。キャンバス地の質感、下地のアクリル絵の具の厚み、スキージー(ヘラ)にかける圧力の手加減によって、仕上がりは1点ごとに完全に異なります。
誤解2:「ペーパー版画(エディション作品)とキャンバス作品の混同」
ウォーホルは1967年以降、紙に印刷したエディション付き(限定250部など)の版画ポートフォリオ『マリリン・モンロー(F&S II.21-31)』を制作しました。これらは現在でもオークションで数千万円から1億円超で取引されていますが、クリスティーズで250億円を記録したような1964年のキャンバス直刷り作品とは市場のカテゴリーが根本的に異なります。キャンバス作品は美術館収蔵級の「オリジナル絵画」として別格の扱いを受けているのです。