臨床の脳ドックや救急診療で頻繁に用いられるのが、造影剤を使わずに脳血管を描出できるMRA(磁気共鳴血管撮影)画像です。頭部MRAのトポロジー(立体配列)を把握する上で、ウィリス動脈輪は読影の基準点(ランドマーク)となります。
MRA画像を見るときは、まず中心部にある八の字〜円環構造を探します。左右の内頸動脈の立ち上がりを確認し、そこから前方に伸びるACA、左右をつなぐAcom、後方へ向かうPcom、そして脳底動脈から左右に分かれるPCAの連続性を追っていくのが基本手順です。
押さえておくべき臨床の常識として、教科書通りの完全なウィリス動脈輪を持つ人は全体の約半数程度にとどまるという点があります。残りの半数近くには、以下のような先天的な「破格(バリエーション)」が存在します。
・後交通動脈(Pcom)の低形成・無形成:細くて描出されない、あるいは存在しないケースが最多。
・胎児型後大脳動脈:後大脳動脈が脳底動脈からではなく、内頸動脈から直接太く起始する形態。
・前交通動脈(Acom)の重複や無形成:前方の連絡が細小化しているケース。
これらの破格がある場合、主幹動脈が閉塞した際の側副血行路が機能しにくくなるため、虚血時のリスク評価においてMRAでの形態確認が極めて重要視されます。