返信用封筒やハガキにあらかじめ「行」や「行き」と印刷されているのは、差出人が自分自身に対してへりくだる謙譲表現を用いているためです。相手側が自社や自分に敬称をつけて印刷するわけにはいかないため、あえて「行」としています。
返送する側がその謙譲表現をそのまま残して送付すると、相手を呼び捨てにしているのと同じ状態になってしまいます。相手の手元に届く郵便物だからこそ、謙譲語である「行」を打ち消し、相手を敬う敬称である「御中」や「様」に改めるのが手紙文化における基本原則です。
こうした敬称の書き換えは、単なる形式的な手続きではなく、相手への敬意や細やかな配慮を行動で示すビジネスコミュニケーションの一環といえます。