那覇市寄宮。決して裕福とは言えない環境、吹き溜まりのような日常の中でマイクを握った唾奇のバックボーンは、彼の表現におけるすべての原点だ。彼を一躍シーンの主役に押し上げた楽曲『道 -TAO-』は、自虐と誇りが綯い交ぜになった独白のようなトラックだった。決して背伸びをせず、みじめな過去もドラッグの影も隠さない。その異常なまでの純度の高さが、同世代のリスナーの心を鷲掴みにした。
クリエイター集団「Pitch Odd Mansion」との合流も、彼のキャリアを語る上で外せない。映像作家Shintaro Kuniedaが捉える退廃的かつ洗練された映像美と、泥臭い唾奇のラップのコントラストは、ジャパニーズ・ヒップホップに全く新しいビジュアルスタンダードを打ち立てた。沖縄というローカルから全国へと波紋を広げたその動きは、地方発信のヒップホップにおけるひとつの到達点となった。