かつてオペラグラスや標準的な双眼鏡と言えば、せいぜい8倍から10倍程度が限界とされていた。それ以上の高倍率になると、人間の手ブレや鼓動による微小な振動がそのままレンズ越しに何倍にも増幅され、視界が激しく揺れて酔ってしまうからだ。どんなに視力が良くても、揺れる像を脳で補正し続けることには限界があった。
しかし、防振機構の進化がその壁を呆気なく突き崩した。12倍、14倍、さらには16倍といった高倍率であっても、ボタンを一つ押すだけで視界がピタリと静止する。まるで目の前に高解像度の4Kモニターが浮いているかのような錯覚すら覚える映像美だ。ドームの天井席からメインステージ上の表情がくっきりと浮かび上がる感動は、観客の現場体験の質を根本から変えてしまった。