内無双という技を語る上で欠かせないのが、類まれな身体能力と格闘センスで土俵を沸かせた名力士たちの存在です。YouTubeの公式アーカイブやSNSの相撲コミュニティでも、内無双の取組映像は常に高い再生数を叩き出しています。
1. 第68代横綱・朝青龍:常識を打ち破った「力づくの高速カウンター」
内無双の歴史において、もっとも破壊的なインパクトを残したのが横綱・朝青龍です。朝青龍の内無双は、小兵力士が見せる「潜り込み」とは根本的に異なり、モンゴル相撲とレスリングで培った強靭無比な体幹から放たれるものでした。
象徴的だったのが、2003年(平成15年)や大関・魁皇戦などで見せた取組です。相手が力任せに前に出てくるところを、土俵際で引いて呼び込むのではなく、低く当たり返しながら相手の内股へ電光石火のスピードで右手を差し込みました。当時の相撲中継の解説席からも「あんな力強い内無双は見たことがない」と驚嘆の声が漏れたほどで、相手の巨体が丸ごと宙に浮き上がって土俵に叩きつけられる姿は、まさに横綱相撲の枠を超えたアスリートの躍動そのものでした。
2. 舞の海秀平:「技のデパート」が大型力士を翻弄した真骨頂
平成初期、巨漢全盛の時代に体重100kg前後の体で立ち向かった「平成の牛若丸」こと舞の海。彼にとって内無双は、曙や小錦といった200kg超のモンスターたちと対峙するための必殺カードでした。
舞の海の内無双の極意は「目くらましと潜航」にありました。立ち合いから猫だましや八艘飛びなどの奇襲で相手の視線を上方に釘付けにし、相手が怒涛の突っ張りで前進してきた瞬間にフッと視界から消えるように低く潜る。そして相手の太ももの内側を抱え込むようにして、自らの体重を預けながらすくい倒しました。当時の手記でも「大きい力士ほど、一度股下に潜り込まれると手が届かず、足元を払われると自重で倒れていく」と語られており、小兵の知略が巨体を制する大相撲の醍醐味がそこにありました。
3. 宇良和輝:レスリング仕込みの重心感知が魅せる「現代の芸術」
低重心のレスリング技術を大相撲に落とし込み、令和の土俵を席巻し続ける宇良。彼が繰り出す内無双は、もはや伝統的な相撲の枠組みを超えた「バイオメカニクスの結晶」と呼ぶべき精度を誇ります。
宇良の内無双が凄まじいのは、攻め込まれて土俵際まで追い詰められた「絶体絶命の局面」から突如として発動する点です。相手が「勝った」と確信して前へ体重を預けたコンマ数秒の隙を見逃さず、沈み込むような体勢から相手の股間に手を滑り込ませます。観客席が一瞬息を呑み、次の瞬間には相手力士が天井を向いて倒れている――。SNS上でも「宇良の内無双は時空が歪んだように見える」「スロー再生で見ないと何が起きたか分からない」と絶賛される、現代大相撲の最高峰の職人技です。