カエデの葉にあしらわれた「11個の頂点」について、10州と連邦直轄地(準州)の数を足し合わせたものだという俗説が長らく信じられてきた。だが、実情ははるかに実利主義的で泥臭い。
当初の草案では、自然のサトウカエデを忠実に再現した「13個の突起」を持つリアルな葉が描かれていた。ところが、この図案を掲げて強風下にさらすと、風にはためいた瞬間に葉の輪郭がブレてただの赤い塊にしか見えなくなるという重大な欠陥が浮上する。そこでオタワの国立研究機関の風洞実験施設に持ち込まれ、人工的に秒速数十メートルの強風を吹き付けながら、高速カメラと肉眼による観察が徹底的に行われた。その結果、遠くからでも最もクリアにカエデと視認できる限界値として導き出された黄金比こそが、頂点を大胆に削ぎ落とした「11本」だったのだ。
さらに、左右の赤帯と中央の白地の比率は「1対2対1」という独特の配分(カナディアン・ペイル)が採用されている。白はフランス王家の白、赤はイングランドの聖ジョージ十字の赤に由来し、1921年に国王ジョージ5世によってカナダの公式カラーとして宣言された歴史を受け継ぐ。二つの建国民族の融和という重厚な物語と、風洞実験から生まれた実用性が奇跡的な合流を果たした瞬間だった。