長年、弁当箱の底でひっそりと白飯と海苔を接着する「裏方」に過ぎなかった削り節。しかし今、そのポジションは劇的に変わった。全国の専門店が争うように導入しているのは、鹿児島県枕崎や高知県土佐清水で伝統製法により作られた最高級の「本枯節(ほんかれぶし)」だ。
カビ付けと天日干しを何度も繰り返し、数ヶ月から年単位の時間をかけて熟成された本枯節は、雑味が一切なく、芳醇な旨味と透き通るような香りを誇る。これを注文を受けてから0.01ミリの極薄に削り出し、温かいご飯の上に惜しみなく敷き詰める。熱によってふんわりと舞い上がる削り節は、もはや単なる具材ではなく、料理の主役そのものだ。
大手弁当チェーンからミシュランガイド掲載の和食店が手がけるテイクアウト専門店まで、削り節の産地や削り方にこだわり抜いた商品が続々と投入されている。単なるデフレの象徴だったメニューが、職人の技術と素材の美学を凝縮した芸術品へと昇華した瞬間と言える。