厚手のローゲージニットを着た際に生じる腕回りの圧迫感は、単にアウターの身幅が細いから生じるわけではありません。アパレルパタンナーの設計データに基づくと、最大の要因は袖ぐり(アームホール)のカッティング深度と袖山(そでやま)の高さにあります。伝統的なセットインスリーブ(肩の頂点から垂直に縫い合わされた袖)のコートは、袖山が高く腕の可動域がタイトに設計されているため、厚みのあるニット生地が脇下と二の腕部分で折り重なり、強い摩擦と物理的圧迫を生み出してしまいます。
特に近年のトレンドであるバルーンスリーブやドロップショルダーのニットは、生地が肩線よりも低い位置にたまります。そこへ標準的なウールコートを羽織ると、ニットの余剰生地がアウターの狭い袖筒の中に押し込められ、結果として「二の腕が外側に張り出す」「背中が丸く盛り上がる」という着膨れ現象を引き起こします。
さらに見落とされがちなのが「裏地の素材感と摩擦係数」です。滑りの悪い裏地や裏地のない硬質なメルトン生地は、ニットの毛足を巻き込んで袖通りを極端に悪化させます。腕周りゆったりアウターを選ぶ際は、外見の寸法だけでなく、内部で生地同士が干渉しない空間設計がなされているかを確認することが不可欠です。