日本神話における神々の体系を紐解くと、天之御中主神の立ち位置はきわめて特異です。『古事記』の冒頭には「天地初発の時、高天原に成りませる神の名は、天之御中主神」と記されています。続いて現れる高御産巣日神(たかみむすひのかみ)、神産巣日神(かみむすひのかみ)とともに「造化三神(ぞうかさんしん)」と総称され、性別を持たず配偶神も持たない「独神(ひとりがみ)」として、出現と同時にその身を隠しました。
伊勢神宮に祀られる天照大御神(あまてらすおおみかみ)が皇祖神であり、太陽を司る人格神的な性格を帯びているのに対し、天之御中主神は「宇宙の運行原理そのもの」「万物の中心に座す絶対的エネルギー」そのものです。名前に含まれる「天之御中(あめのみなか)」は宇宙の中心を、「主(ぬし)」は統べる者を意味しており、何者にも依存しない絶対的な根源神であることを示しています。
この神格が中世以降、仏教の「妙見菩薩(みょうけんぼさつ)」や道教の「北極星・北斗七星信仰(北辰信仰)」と深く習合したことで、人々の運命を司る星の王としての性格を強めました。生命の誕生から寿命、事業の成否、果ては天災地変の回避に至るまで、「宇宙の全法則を司る神」であるがゆえに、後世において天之御中主神のご利益は最強と評されるに至ったのです。