体育館の壁際に整然と並んでいた木製の横木。あの体育館の壁にあるはしごの名前こそが「肋木」です。まず押さえておきたいのが肋木の読み方ですが、これは「ろくぼく」と読みます。人間の胸部を保護する「肋骨(ろっこつ・あばらぼね)」のように、横木が何段も等間隔に並んでいる外見構造に由来して名付けられました。
肋木は単なる遊具ではなく、極めて緻密な医学的理論のもとに考案された歴史的器具です。その起源は19世紀初頭のスウェーデンに遡ります。ナポレオン戦争後の混乱期、国民の体力向上と傷病兵の機能回復を目的としてスウェーデン体操の発祥経緯を築いた教育家・医学者のペール・ヘンリック・リング(1776〜1839年)が開発しました。
リングは解剖学や生理学の知見を体操に統合し、身体を左右均等に矯正・鍛錬するための専用器具として「Stall Bars(スウェーディッシュ・ウォール)」を設計しました。これが日本に伝わったのは明治時代末期から大正時代にかけてのことです。文部省(当時)が学校体育の近代化を図るなかでスウェーデン体操を導入し、東京高等師範学校などを起点として全国の学校体育館の壁面へ一斉に配備されていきました。