インターネット上の体験談や噂の中には、過剰な恐怖を煽るものや、逆にリスクを軽視した誤った情報も散見されます。治療を始める前に押さえておくべき2大リスクが「身体的副作用」と「精神的ストレス」です。
副作用の代表格「OHSS(卵巣過剰刺激症候群)」とは
卵巣刺激によって多数の卵胞が育った際、排卵誘発剤の過剰反応によって卵巣が大きく腫れ上がり、お腹や胸に水(腹水・胸水)が溜まる合併症をOHSS(Ovarian Hyperstimulation Syndrome)と呼びます。
特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の傾向がある方や、若年層で抗ミュラー管ホルモン(AMH)値が高い方は注意が必要です。重症化すると血液濃縮による血栓症のリスクを伴いますが、現在は刺激プロトコルの個別最適化(アゴニストトリガーの使用など)や、採卵周期には胚を戻さず全胚凍結して翌周期以降に移植する「完全分割受精卵凍結」の普及により、重症化リスクは大幅に減少しています。
数値化できない「不妊治療うつ」と関係性の歪み
体外受精の過程で最も過酷なのは、身体的な痛み以上に「先の見えないスケジュール調整」と「陰性判定を受けたときの喪失感」です。通院日数が予測できないことによるキャリアとの葛藤、パートナーとの治療に対する温度差、毎月の判定日に突きつけられる期待と落胆の落差が、当事者の精神をすり減らしていきます。
周囲が無邪気に投げかける「リラックスすればできるよ」といった言葉が、深刻な心理的孤立を招くケースも少なくありません。