事故後の現場実態を語るうえで、元作業員の漫画家・竜田一人が手がけたルポルタージュ『1F 福島第一原子力発電所労働記』の存在は極めて大きい。世間の煽り報道とは異なり、事故処理にあたる労働者の淡々とした日常と過酷な労働環境を描いた同作は、本作のリアリティ構築にも多大な影響を与えた。
重密閉服の中で吹き出す汗、マスク越しに聞こえる荒い息遣い、危険手当や防護区域の管理体制。映像作品においても、こうした泥臭い作業員たちの実態が克明に描かれている。巨大な歴史的事件の裏には、名もなき労働者たちの手作業の積み重ねが存在していたことを、観る者に力強く思い出させる。