「泣き出しそうな空を見つめて」―言葉を選び抜いた作詞家・荒木とよひさは、ただの失恋歌を作るつもりはなかった。彼が目指したのは、女性の内に秘めた狂おしいほどの情念と、静かな諦念が同居する究極の心理描写だ。スタジオでの制作時、テレサ・テンは歌詞の一句一句に深く共鳴し、時には声を詰まらせながらマイクに向かったという。
悲恋の真実。それは、二人が結ばれない運命であることを知りながらも、なお深く愛してしまうという絶望的な自我の解放だ。荒木が紡いだ詩は、テレサ自身が辿った波乱に満ちた人生や、国境に揺さぶられた孤独な魂の叫びとも重なり合う。だからこそ、歌声には虚構を超えた本物の涙が宿っている。