大曲(秋田)や土浦(茨城)といった伝統的な競技大会が「花火師の技術審査」を主眼に置くのに対し、鶴岡市赤川河川敷で開催される赤川花火大会は「観客の感情をいかに揺さぶるか」というエンターテインメント性に極限まで特化しています。その象徴が、羽黒橋から三川橋の間、およそ700メートルの打ち上げ幅をフルに使って展開されるワイドスターマインです。
人間の有効視野は水平方向でおよそ100度から120度とされていますが、赤川の有料観覧席から見上げる花火は、首を左右に振らなければ全貌を捉えきれないほど視界を埋め尽くします。大会会長の鈴木譲氏が「地域を豊かにしたいという想いから始まった」と語る通り、この地でしか成立し得ない規格外のスケール感は、単なる地方イベントの域を完全に超越しています。
さらに観客を涙ぐませるのが、計算し尽くされた感動のミュージックスターマインです。コンピューター制御により、点火タイミングを音楽のメロディやビートと100分の1秒単位で同期。夜空に大輪の花が咲く瞬間と、胸を突き上げる重低音が完全に一致したとき、脳内には強烈な快感物質が放出されます。視覚と聴覚が光と音に完全占有されることで、日常のストレスや雑念が吹き飛び、深いカタルシス(感情の浄化)がもたらされるのです。これこそが、リピーターが「赤川だけは別格だ」と口を揃える最大の心理的要因といえます。