学徒出陣によりペンを銃に持ち替えた若者たちが集められたのは、徳島海軍航空隊だった。千氏はここで過酷な飛行訓練を重ね、仲間との絆を深めていった。同じ志を持つ若者たちは、夜になると文学や哲学を語り合いながらも、迫りくる出撃の時を悟っていたという。
やがて結成された神風特別攻撃隊をはじめとする特別攻撃隊の編成により、親しい友が一人、また一人と基地を飛び立っていった。滑走路で見送る際、手を振る戦友の表情は穏やかですらあった。二度と戻らない空へ消えた背中。残されたのは、机の上に置かれた遺髪と遺書だけだった。その痛切な記憶が、後年の千氏の生き方を大きく決定づけることになる。