彼女の代表作を語るうえで、1965年の映画『怪獣大戦争』に登場するX星人・波川(ナミカワ)役を外すことはできない。全身をタイトなグレーの宇宙服に包み、冷徹な仮面を被りながらも、地球人の宇宙飛行士・富士(演:ニック・アダムス)との愛に揺れる異星人の悲劇を、哀愁に満ちた気品で演じ切った。
世界国家の冷酷な指令と、個人の純粋な愛との間で苦悩する波川の最後は、日本の特撮SF映画史上最も美しい名場面のひとつとして今なお語り継がれている。冷酷な異星人の統制社会に対する静かな反逆。彼女の瞳から溢れ出た一滴の涙と最後の選択は、子供向けと見なされがちだった娯楽映画に、ギリシャ悲劇にも通じる重厚なドラマ性を吹き込んだ。