歯への懸念と並んで議論されるのが、炭酸水を毎日飲むデメリットと理由の核心である消化器系への負荷です。健康維持のつもりで飲んでいる習慣が、体質や体調によっては逆効果をもたらす物理的・生理的なメカニズムが存在します。
まず押さえるべきは、胃酸と消化への影響です。正常な人間の胃内は、殺菌とタンパク質分解のためにpH1.0〜2.0という強烈な胃酸で満たされています。そのため、pH4〜5程度の炭酸水が入ってきたところで、胃液全体が酸性に傾いて胃壁を溶かすような化学的損傷は起こりません。問題は「酸性度」ではなく「炭酸ガスの物理的刺激」にあります。
炭酸ガスが胃内に入ると、胃壁を適度に伸展させて血流を促し、胃の運動を活性化させる利点があります。しかし、1日に1.5〜2リットル以上を過剰摂取したり、一度に大量のがぶ飲みを繰り返したりすると、胃内圧が急上昇します。これにより、胃と食道の間にある「下部食道括約筋」が緩み、強酸性の胃内容物が食道へ逆流する「逆流性食道炎」の発症・悪化を招く危険性があります。
さらに、過敏性腸症候群(IBS)を抱えている人の場合、消化管内に充満したガスが腹部膨満感や強い腹痛、下痢・便秘の引き金になります。「体にいいはずだから」と無理をして飲み続ける行為は、内臓の生体アラートを無視する愚行と言わざるを得ません。