両者の待遇差は、ファイトマネーにも如実に表れていました。王者タイソンに支払われた報酬が約600万ドル(当時のレートで約9億円)だったのに対し、挑戦者ダグラスのファイトマネーは約130万ドル。経済的にも立場的にも完全な「アンダードッグ(噛ませ犬)」扱いでした。
しかし、ダグラス陣営が練り上げた戦術は完璧でした。ダグラスはタイソンの突進に対して足を使い続け、強烈な左ジャブを突き刺して距離を支配。タイソンが強引に中に入ろうとするとクリンチで勢いを殺し、離れ際に右ストレートとアッパーを打ち込みました。
インファイトで圧倒的な強さを誇るタイソンに対し、外からのジャブでリズムを奪い、視界を塞ぐという教科書通りのボクシングを徹底したことが、奇跡のアップセットを生み出した技術的要因です。