太田裕美『九月の雨』歌詞解剖|松本隆と筒美京平が刻んだ昭和歌謡の基本情報から最新動向までを一挙に解説しました。

作詞家・松本隆が本作で構築した物語は、あまりにもドラマチックだ。降りしきる秋の雨の中、去りゆく男の車を追いかけ、濡れたアスファルトにたたずむ主人公。歌詞に登場する「車のドアを叩きながら」というフレーズは、静かな諦念ではなく、割り切れない想いの高まりを鮮烈に視覚化している。

九月の雨は、夏の名残と冬の冷気の狭間に位置する。過熱した情熱が冷めていく刹那の冷たさ。松本隆はその季節の移ろいを、揺れる感情のメタファーとして巧みに利用した。言葉数は決して多くない。それだけに、太田裕美の透き通るような声で歌われることで、余白の感情が聴き手の脳裏にどこまでも広がっていく。