エコー検査で告げられる「胎児水腫(たいじすいしゅ)」とは、単一の独立した疾患名ではなく、お腹の中の胎児の細胞間質や体腔内に異常な水分(体液)が大量にたまり、全身が高度にむくんだ「状態」を指す症候群です。
日本産科婦人科学会をはじめとする周産期医学の標準的な定義において、胎児水腫の診断基準は以下の4つのうち2カ所以上に異常な液体貯留が確認された場合と定められています。
- 皮下浮腫(全身の皮膚のむくみ):胎児の頭部、胸部、腹部などの皮下組織が通常5mm以上に肥厚している状態
- 胸水(胸腔への水貯留):赤ちゃんの肺を取り囲む胸腔内に水がたまり、肺を圧迫している状態
- 腹水(腹腔への水貯留):肝臓や腸管の周囲など、お腹の中に水がたまっている状態
- 心嚢水(心臓の周囲への水貯留):心臓を包む心膜腔に液体がたまり、心臓の拍動が制限される状態
臨床の現場では、これらに加えて胎盤の肥厚(胎盤水腫)や羊水過多を合併するケースが多く見られます。胎児水腫のエコー検査所見としては、胎児の輪郭が二重に見える「ハローサイン(Halo sign)」や、腹水によって腸管がプカプカと浮いて見える像、あるいは心臓の周囲に黒い液体のリングが明瞭に映し出されることで発見に至るのが典型的な経緯です。
胎児の循環器系やリンパ系は極めて繊細です。心臓のポンプ機能の低下、静脈圧の上昇、血漿膠質浸透圧の低下、毛細血管の透過性亢進、リンパ液の還流障害といった複数の生理的破綻が重なった結果として、体液バランスが崩壊して水腫が形成されます。