杉玉の真価は、暖簾をくぐる時間帯によって劇的に変化する体験設計にある。昼の目玉は、破格のコストパフォーマンスを誇るランチ限定メニューだ。豪快にネタが盛られた限定の舟盛り丼や、揚げたての天麩羅がセットになった握り御膳は、近隣のオフィスワーカーたちの胃袋を鷲掴みにしている。1,000円前後の日常価格でこの鮮度とボリュームを出せる店は、周辺を見渡してもそう見当たらない。
夜の帳が下りると、厨房の空気は一気に居酒屋モードへとシフトする。訪れた者のほとんどが注文するのが、見た目にも鮮やかな「極み寿司」シリーズだ。キャビアに見立てたランプフィッシュキャビアを添えた軍艦や、トリュフの香りを纏わせた炙りネタ、フォアグラのコクを重ねた握りなど、高級店顔負けのクリエイティブな仕掛けが1皿数百円台で供される。伝統的な江戸前寿司の枠をあえて崩し、酒が進むように計算し尽くされた味覚のエンターテインメントがここにある。