山王戦の結末に関して、読者の間で長年議論されてきたのが「続く3回戦で愛和学院にウソのようにボロボロに負けた」という最終回の展開です。ネット上では「桜木の怪我だけが原因だったのか」「連載打ち切りだったのではないか」といった様々な憶測が飛び交うことがありますが、実態は緻密に計算された現実的な帰結でした。
湘北高校が愛和学院に大敗を喫した背景には、主に3つの明確な要因が存在します。
- 主力5人の体力枯渇:湘北は層の厚い山王と異なり、ほぼフル出場を続けたスタメン5人に依存していました。三井は山王戦の時点で自力で歩けないほどの脱水状態にあり、赤木や宮城、流川も肉体と精神の限界を迎えていました。
- 絶対的リバウンダー桜木の欠場:背中の急性損傷(脊椎・神経系の懸念)により、桜木は愛和学院戦の欠場を余儀なくされました。インサイドの制空権を失った湘北は、愛知の星・諸星大を擁する愛和学院の波状攻撃を食い止める術がありませんでした。
- メンタル面のエネルギー放電:高校スポーツの世界で頻繁に見られる「大金星の後のバーンアウト(燃え尽き症候群)」。全国最強の山王を倒すことに全精神を注ぎ込んだ湘北にとって、翌日の試合へ再び極限の集中力を維持することは極めて困難でした。
井上雄彦氏は当時の各種インタビューにおいて、「山王戦以上の試合は描けない」「トーナメントのリアリズムとして、薄氷の勝利の後に待つ過酷な現実を描くことが作品の誠実さである」といった趣旨を語っています。奇跡の勝利の直後に訪れる残酷な現実こそが、『SLAM DUNK』を単なる勧善懲悪のファンタジーではなく、リアルな青春のドキュメントたらしめている理由です。