一般社会ではしばしば「プロアスリートは短命である」という言説が語られます。これについては競技種目や運動強度の性質によって結果が大きく分かれます。医学誌に発表されたオリンピックメダリストやプロ選手の追跡調査によると、持久系競技(長距離走、自転車ロードレースなど)や混合型球技の選手は一般男性に比べて平均寿命が2〜3年長い傾向が見られる一方、コンタクト競技や極端な増量を求められる重量級競技では異なる様相を呈しています。
例えば、激しい衝突を繰り返すアメリカンフットボール(NFL)や大相撲などの選手を対象とした調査では、引退後の心血管疾患リスクや代謝異常、変形性関節症の有病率が一般平均を大きく上回ることが報告されています。現役時代に作り上げた肥大した心臓と大量の筋肉量は、引退後に運動量が急減した際、高血圧や脂質異常症を急速に悪化させるリスク要因へと転じます。
元トップアスリートの手記や引退後のインタビューでも、過密な現役生活の代償が赤裸々に語られています。「現役時代は常に関節と内臓に激痛を抱え、痛み止めを常用しながら走っていた」「引退した瞬間に自律神経のバランスが崩れ、重度の睡眠障害と不整脈に悩まされた」といった証言は、極限まで肉体を酷使するプロスポーツの世界が、健康維持とは真逆のベクトルに位置している現実を浮き彫りにしています。