ネット上の情報や旅行者の声でしばしば話題になるのが、「スペインの太陽の沈む時間が遅すぎる」という現象です。実際、夏のマドリードでは夜21時半を過ぎても空が明るく、夜22時にようやく街灯が灯り始めます。
これには歴史的かつ政治的な背景が存在します。地理的な位置関係(経度)だけで見れば、スペイン本土の大部分はイギリスやポルトガルと同じ「グリニッジ標準時(UTC+0)」のゾーンに位置しています。しかし、1940年の第二次世界大戦中、当時のフランコ総統がナチス・ドイツとの足並みを揃える目的で時計を1時間進め、中央ヨーロッパ時間(UTC+1)を採用したという経緯があります。
大戦終結後もこの時間設定が戻されることはなく、結果として「太陽の南中高度に対して時計が1〜2時間先行している」という特異な構造が固定化しました。このズレこそが、スペイン特有の遅い生活リズム(昼食が14時〜16時、夕食が21時〜23時)を定着させた決定的な要因です。「スペイン人は夜型でのんびりしている」という一般的なイメージは国民性のみならず、制度的な時間のズレが生んだ必然的な文化と言えます。