『Lovers』を語る上で誰もが一度は立ち止まるのが、歌い出しに配置された「ねえ浮気して ねえ余気して 単語さえ覚えちゃいないが」という一節です。一般的なラブソングであれば、相手への一途な想いや永遠の純愛を誓うのが王道ですが、sumikaのアプローチは全く異なります。
このフレーズの真意は、決して浮気や裏切りを推奨しているわけではありません。人間は誰しも迷いや弱さ、好奇心を抱く不完全な存在であるという前提に立ち、「聖人君子のような完璧な自分を演じなくていい」というパートナーへの深い許容を示しています。片岡健太はインタビュー等でも、人間が持つ泥臭い感情や格好悪い部分を包み隠さず肯定する重要性を度々語ってきました。
続く歌詞で「出来ないなら もうしなくていいよ 最終回の手前で 最後の最後に君を選ぶから」と歌われている通り、目先の衝動や迷いすらも織り込み済みで、人生の最後に互いを選び抜くという揺るぎない覚悟が提示されます。「浮気」という極端な言葉をあえてフックに据えることで、綺麗事ではないリアルな人間の結びつきを鮮やかに際立たせているのです。