街の東側が近未来なら、西側には数万年の時間が堆積した異界が待っている。大谷石の採掘場跡である大谷資料館だ。階段を下りるにつれ、肌を刺すような冷気と厳粛な静寂が押し寄せる。野球場がすっぽり収まる約2万平方メートルの地下空間は、映画のロケ地やアート展の舞台として知られるが、今回の取材班は特別に管理区域の奥へと足を踏み入れた。
現在、安全対策の検証が進む未公開の深部坑道では、石肌に残る職人たちの手掘り跡が当時の荒々しい息遣いをそのまま留めていた。間接照明に照らされたエメラルドグリーンの地下水脈は、息を呑むほど澄み切っている。関係者によれば、保全と観光活用を両立させた「ガイド付き限定プレミアムツアー」の試験運用が水面下で計画されているという。さらに近隣の大谷寺へ足を延ばせば、日本最古の石仏とされる国宝級の大谷観音と、岩壁に包まれた神秘的な庭園が旅人の心を鎮めてくれる。