時計の針を2008年3月に戻そう。ニューヨーク・ヤンキースの主砲として確固たる地位を築いていた松井秀喜氏が、突如として開いた結婚記者会見。全米と日本のメディアが固唾をのんで見守る中、報道陣の前に提示されたのは、写真ではなく松井氏自らが描いた1枚の「似顔絵」だった。手描き特有の温かみと愛嬌が漂うそのスケッチは、当時大きな話題を呼んだ。
相手は元会社員の一般女性、中山愛代(あいよ)さん。富山県出身で、トヨタ関連企業に勤めていた経歴を持つとされる。スポーツ紙や週刊誌が過熱した取材合戦を繰り広げる中、松井氏が求めたのは「彼女のプライベートを絶対に侵害させない」ことだった。パパラッチが日常を脅かすニューヨークにあって、顔写真を公表しない決断は極めて異例。メディアに対する優しさと牽制が交錯する、実に彼らしいアプローチだったといえる。