かつて日本全国で当たり前のように行われていた動物の殺処分。松本市を含む長野県内でも、その数は大きく減少してきた。行政と民間の草の根活動が結びついた成果だ。しかし、問題が完全に消え去ったわけではない。
松本保健所に持ち込まれる犬の理由は多岐にわたる。最も深刻なのは飼い主の高齢化だ。突然の入院や他界により、取り残されるペットが増加している。さらに、知識不足による多頭飼育崩壊や、放し飼いに起因する不慮の繁殖も後を絶たない。
保護された犬たちは、単なる数値上のデータではない。一匹一匹に心があり、傷ついた過去がある。怯えて人前に出てこられない犬もいれば、執拗に人間を警戒する犬もいる。殺処分ゼロという目標は、こうした傷ついた命を一匹ずつ救い上げる粘り強い作業の積み重ねの上に成り立っている。