画面の向こう側の美しい生活に魅了され、自らも出汁をイチから取り、リネンの服を整え、プラスチック製品を極力排除する。そうやってスタートした習慣が、数ヶ月後には重苦しいプレッシャーへと形を変えるケースが後を絶たない。
特にInstagramやYouTubeに溢れる整然とした映像コンテンツは、人々に「こうあるべきだ」という強力な固定観念を植え付ける。仕事や子育てで疲れて帰宅した夜、シンクに溜まった食器を目にして強い罪悪感を抱いてしまうのだ。本来なら心を癒やすはずの生活習慣が、自己否定の引き金になるという皮肉な現象が起きている。
専門家はこれを「ライフスタイル疲弊」と呼ぶ。他人に見せるための美学に囚われ、生活の主役であるはずの自分自身の感情が置き去りにされているのだ。完璧なヴィジュアルを保つための労働負荷が、日々の心の余裕を奪っていく悪循環こそが、SNS時代の最大の落とし穴といえる。