視聴者の記憶に最も深く刻まれているのが、旧日本軍の施設跡地とも噂される打ち捨てられたサイロでのエピソードです。昼間でも薄暗く、地元の子どもたちからも「お化けが出る」と恐れられているこの場所へ、杏奈とマーニーは足を踏み入れます。
このシーンがトラウマと呼ばれる理由は、単なるお化け屋敷的な驚きではなく、「信じていた存在から見捨てられる絶望感」が生々しく描かれている点にあります。マーニーは幼少期にサイロへ閉じ込められた恐怖体験を告白しますが、雷鳴が響く暗闇の中で突如として錯乱し、幼馴染の少年「和彦」の幻影を杏奈に重ね合わせます。
杏奈が必死に呼びかけても、マーニーの瞳には杏奈が映っていません。さらに激しい嵐の中、気がつけばマーニーは姿を消し、杏奈は一人冷たい雨の中に置き去りにされてしまいます。米林宏昌監督が当時の制作現場で語った「少女の心の奥底にある孤独の闇をリアルに描き切る」という演出方針が、子供向けアニメの枠を超えた真に迫るサスペンスを生み出しました。