七代目尾上菊五郎と富司純子という、伝統芸能と映画界のサラブレッドとして生を受けた寺島しのぶ。幼少期から芸の空気を吸って育ちながらも、「女性」という理由だけで歌舞伎俳優としての道は閉ざされていた。弟が伝統を継承していく姿を間近で見つめながら、彼女の中に蓄積された表現への飢餓感と葛藤は、並大抵のものではなかったはずだ。
文学座で演技の基礎を徹底的に叩き込み、舞台で鍛え上げられた圧倒的な身体性と声量。しかし彼女が真のアイデンティティを見出したのは、映画という自由で残酷な表現の場だった。血筋の重圧をかなぐり捨て、衣装もメイクも脱ぎ去り、ひとりの人間としてカメラの前に立つ。その覚悟こそが、彼女を孤高の映画女優へと押し上げる原動力となった。