過去の災害事例を分析すると、その大半が保管中の不注意や混同に起因している。密閉が不十分な容器に空気中の湿気が侵入し、気づかないうちに徐々に分解・発熱が進行して自然発火に至ったケースも報告されている。
正しい保管の鉄則は「完全密閉」「絶対除湿」「可燃物からの隔離」の3点だ。直射日光を避け、冷暗所に保管することは当然として、酸性物質や還元剤、金属粉末と同室に置くことは固く禁じられる。万一の漏洩時には、決して水を使って清掃してはならず、乾燥した無機質の吸着剤を用いて速やかに回収しなければならない。
「水は火を消す」という常識が、この物質の前では通用しない。この徹底した現場の意識改革こそが、事故を防ぐ最大の防壁となる。