水陸両用バスの乗車体験を単なる「少し変わった観光ツアー」と捉えていると、現地で大きなギャップに直面します。利用者が予約ボタンを押す前に知っておくべき最大の理由は、この乗り物が「陸上を走る船」であり、遊園地のアトラクションと本格的な船舶クルーズが同居したハイブリッド空間であるという構造的特徴にあります。
最大の見せ場である「スプラッシュ(着水)」の瞬間、車内にはシートベルト越しでも伝わる強烈な減速Gと豪快な水煙が立ち込めます。陸上を走っていた巨大な車体が浮力を得てプカプカと波間に浮かぶ瞬間、乗客から自然と上がる歓声は、通常の遊覧船では決して味わえないダイナミズムです。また、陸上走行時も車高が一般的な大型観光バスより約1メートル高く設計されているため、普段見慣れた街並みをビルの2階フロア相当の目線から見下ろすパノラマビューが展開されます。
一方で、多くの車両には窓ガラスが設置されておらず、開放的なビニールカーテン仕様となっています。これにより、春先や秋口の心地よい風をダイレクトに感じられる反面、真冬の防寒対策や真夏の熱中症対策を怠ると過酷な乗車体験になりかねないという決定的な注意点が存在します。「非日常のスリル」と「自然環境をダイレクトに受けるオープンエアのリスク」、この表裏一体の性質を理解しておくことこそが、後悔のないツアー選びの第一歩となります。