冥王星の降格劇をめぐっては、一般社会でいくつかの大きな誤解が流布しています。その最たるものが、「冥王星が宇宙空間で木っ端微塵に爆発・消滅した」という極端な都市伝説です。
冥王星は現在も変わらず、太陽から平均約59億キロメートル離れた暗黒の軌道を巡り続けています。宇宙空間で何らかの物理的異変が起きたわけではなく、あくまで「人類側の分類整理のルールがアップデートされた」に過ぎません。
さらに注目すべきは、惑星から外された後の探査によって明らかになった、冥王星の驚くべき素顔です。2015年7月14日、NASAの無人探査機「ニュー・ホライズンズ」が人類史上初めて冥王星へのフライバイ(接近通過)に成功しました。地球に送られてきた超高解像度画像は、全世界の天文学者を驚天動地に陥れました。
そこに写っていたのは、太陽光がほとんど届かない「死んだ氷の塊」ではなく、息をのむほど活発に地質活動を続けるダイナミックな世界でした。表面には巨大なハート形の窒素氷河(スプートニク平原)が広がり、高さ3,000メートルを超える水の氷の山脈が連なり、さらには氷の地殻の下に液体の「地下海」が存在する可能性まで極めて高いと結論づけられたのです。
分類上の降格によって一時的に注目度を落としたかに見えた冥王星ですが、天体物理学の観点からは「太陽系外縁部において最も地質学的に若々しく、謎に満ちたフロンティア」として、以前にも増して熱烈な研究対象となっています。