彼女の死後、文藝春秋から刊行された『一切なりゆき 樹木希林のことば』をはじめとする関連書籍は、空前のベストセラーを記録した。出版業界においても異例のヒットとなったこれらの本には、人生の晩年をいかに生き、いかに面白がり、いかに去っていくかという彼女の美学が凝縮されている。
「おごらず、人と比べず、面白がって、平気に生きればいい」。複雑化した情報社会で他人の目線に疲れ果てた現代人にとって、彼女のシンプルな教えは清涼剤のように染み渡る。病や老いさえも「面白がる」ためのネタへと変えてしまう力強さ。そこには、自らの足で立ち、自分の人生の舵を自分で握るための実用的な幸福論が詰まっている。