殊能将之の名を一躍世に知らしめたのが、1999年に第13回メフィスト賞を受賞したデビュー作『ハサミ男』です。美少女の喉にハサミを突き立てる連続殺人犯「ハサミ男」が、自分の手口を真似た模倣犯の正体を突き止めようと独自に調査を開始するという、前代未聞の導入から物語は幕を開けます。
本作がミステリ史に金字塔として君臨し続ける理由は、極限まで磨き抜かれた叙述トリックの完成度にあります。読者の先入観や盲点を鮮やかに突き、最後の一撃で見事なカタルシスをもたらす構成は、2005年の映画化をはじめ、今なお「どんでん返しミステリの最高峰」として語り継がれています。
緻密に張り巡らされた伏線と、どこか退廃的でユーモラスな文体が生み出す独特のグルーヴ感は、デビュー作にしてすでに完成された職人技の域に達していました。