1980年代前半、音楽界は大きな変革期にあった。メインストリームのロックやポップスが成熟する一方で、パンクの精神を継承したニュー・ウェイヴの波が押し寄せていた時代だ。その渦中で登場したシンディ・ローパーは、洗練された80年代ポップスのサウンドと、パンキッシュなDIY精神を奇跡的なバランスで融合させてみせた。
『タイム・アフター・タイム』に代表される繊細で情感豊かなバラードから、弾けるようなアップテンポのナンバーまで、彼女の楽曲はジャンルの垣根を軽々と飛び越えた。レコード会社からの度重なる介入を突っぱね、自分の聴かせたい音と着たい衣装を貫いた姿勢こそが、後の女性ミュージシャンたちに「自分自身の主導権を握る」という決定的な勇気を与えたのである。