健康情報やテレビの健康番組ではしばしば、「右向き=消化に良い」という図式のみが強調されがちです。しかし、ここには専門医が指摘する深刻な盲点が潜んでいます。
確かに、胃から十二指腸への物理的な排泄経路だけを見れば右向きは合理的です。しかし、それは下部食道括約筋が完全に機能しており、胃の噴門部に緩みがない健康な人に限られた話です。
加齢や肥満、日常的な猫背姿勢、あるいは長時間のデスクワークによって腹圧が高まっている人は、食道裂孔ヘルニアや括約筋の筋力低下を抱えている頻度が極めて高いことが臨床データで判明しています。括約筋が緩んでいる人が右向きに寝転がると、胃の出口が下がる一方で、胃体部の上部に溜まった胃酸が食道との接合部付近へと波打ち、わずかな腹圧や呼吸の動きで食道内へと一気に漏れ出してしまいます。
つまり、「胃もたれを早く解消したいから」と安易に右向きを選択した結果、重度の食道炎を誘発してしまうパラドックスが起こり得るのです。食後すぐ横になる場合の注意点として、自分の不調が「単なる胃もたれ・停滞感」なのか、それとも「呑酸(口に酸っぱい水が上がる)・胸のつかえ感」なのかを厳密に見極めなければなりません。