著者の西加奈子は、人間の滑稽さ愛おしさを独自の温かな眼差しで切り取ってきた稀代のストーリーテラーだ。本作で描かれる主人公・きりこは、決して悲劇のヒロインにとどまらない。容姿という重荷を背負わされながらも、どこか人懐っこく、愚直なまでに一生懸命に生きる彼女の姿は、読む者の胸を強く打つ。
物語を動かすキーパーソンである猫のぶくとの掛け合いは、クスッと笑わせながらも切なく、深い愛に満ちている。登場人物たちの台詞一つひとつに込められた独特の祝祭感は、容姿に傷ついた経験を持つすべての人々を温かく抱きしめる。自己否定の沼に沈みそうな現代人にとって、きりこの存在は一筋の希望の光にほかならない。