「観客が本当に欲している感情の揺れを誤魔化さずに描きたかった」。是枝裕和監督は周囲にそう語ったという。希薄になりがちな現代の人間関係において、誰しもが抱える孤独と、それでも誰かと繋がっていたいという切実な願い。監督が目指したのは、上辺だけの感動ドラマではなく、観る者の骨身に染み渡るような至高のヒューマンドラマだ。
海外映画祭での評価を確立した是枝監督が、あえて原点に立ち返りつつ新たな映像表現に挑んだ本作。過剰な演出を削ぎ落とし、登場人物たちの細やかな息遣いや視線の交錯だけで感情の機微を表現する手腕は、まさに職人芸の領域に達している。