この世界的な現象の原点を振り返ると、ある父親の温かな愛情に行き着く。1983年、イギリスのデザイナーであるクリス・ウィグスは、幼い娘ケイトのために、使い古した化粧用のパウダーコンパクトをくり抜き、小さな人形と家具を手作りで仕込んだ。いつでもどこへでも持ち運べる、自分だけの秘密基地を作ってあげたかったのだ。
この画期的なアイデアは瞬く間に注目を集め、玩具メーカーのブルーバード・トイズによって製品化。1989年に市場へ投入されるや否や、瞬く間に社会現象となった。大型のドールハウスが主流だった時代に、「ポケットに入る世界」という逆転の発想を持ち込んだクリス・ウィグスの閃きは、玩具史における偉大なパラダイムシフトとして今なお語り継がれている。